ニュープロ(ロチゴチン)

適応
  パーキンソン病、 中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群)

名前の由来
 特になし

血中半減期
 5-6hr

代謝
 硫酸抱合、グルクロンサン抱合
 CYP2C19、CYP1A2

作用機序
 ドパミン受容体(主としてD3)の刺激によるドパミン神経系の活性化

所見
 「ニュー」は Neuron から来ていると思いますが、「プロ」の由来はどこなんでしょう。。。
 インタビューフォーム見る中で名前の由来を見るのが結構楽しみなので、「特になし」とかあるとちょっとがっかりします。薬の名前決めるのって結構重要なイベントだと思うんですけど、特に何の思い入れもなく適当にくじ引きとかで決めるんでしょうか。不思議です。

 さて、薬理作用はというと、レキップ(ロピニロール)やミラペックス(プラミペキソール)などのドパミン作動性パ-キンソン病治療と同様に、ドパミンD2様受容体を刺激することで作用を示します。
 D1様受容体(D1, D5)は興奮性のシグナル伝達を、D2様受容体(D2, D3, D4)は抑制性のシグナル伝達を起こします。パーキンソン病ではドパミンの低下からこれらの調節が効かなくなり、下流にあるアセチルコリン神経系の活性化とそれに伴うGABA神経系の活性化を引き起こします。GABAは基本的に抑制性の神経伝達物質ですので、パーキンソン病の症状のひとつである運動性の低下は、このGABA神経の活性化によるものと言われています。

 この製剤はパーキンソン病で初めてのパッチ型製剤ではないでしょうか。
 慢性的な疾患に対する服薬コンプライアンスやQOLのことを考えると、毎回注射をするのは苦痛が伴いますし、経口薬は飲み忘れる可能性がありますので、経皮吸収型の製剤が最適かなと思います。もちろん、人それぞれ好みはありますので一概には言えませんが。

 本音を言うと、このような対症療法ではなく根本を治療出来る薬剤の開発が待ち遠しいところですが、病変の原因はいまだにはっきりとわかっていませんので、今後の研究に期待です。
 再生医療の面からいうと、2016年にはiPS細胞をドパミン神経細胞へ分化させて、脳へ移植するという大胆な臨床研究も京大で始まるようです。 結果としては、薬物治療と同じで脳内のドパミンを対症療法的に増やすということだと思いますので、病気を完治させるものではありませんが、場合によっては薬物治療以上の効果が得られるものになると思います。脳を開けて移植っていうのは少し怖いですけどね。。。

 薬の市場が小さくなってしまうのは、薬屋としては少し残念ですが、医療人としてはうれしく思います。
 日本発のiPS細胞。再生医療も日本がリードしていけるよう、がんばって欲しいです。

製品情報-ニュープロ
承認 2012.12.25
薬価収載 2013.02.22

シムジア(セルトリズマブ)

適応
 既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)

名前の由来
 一般名のCertolizumabのcとzを用いた造語に由来している。

血中半減期
 10-13hr

代謝
 該当資料なし

作用機序
 TNF-α との親和性が高く、 TNF-α と結合することで TNF-α 受容体との結合を減らし、以後の伝達・炎症反応を抑える。

所見
 抗体の Fab 部 に PEG をつけて血中滞留性を持たせた製剤です。
 抗体は抗原に結合後、その抗原を破壊するような細胞障害性を惹起します。シムジアは同種薬剤のレミケード(インフリキシマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、ヒュミラ(アダムリマブ)と比べて、その細胞障害性が低いことが売りですが、一方で TNF-α に対する親和性は、 in vitro の実験では レミケード > ヒュミラ > シムジア > エンブレル という結果も出ています。
 それからシムジアは既に発生している炎症を抑えるような作用もあるみたいですね。

 そういえば、第一三共がエンブレルのバイオシミラーを作るとかニュースで見た気がしますが、製品化は出来たんでしょうか。バイオシミラーは分子量が大きいだけあって、真似するのはなかなか難しいと思いますが、リウマチ患者さんにとっては、おそらくほぼ一生付き合っていく薬になと思いますので、安価な後発品が選択できるようになったら良いなと思っています。 

製品情報-シムジア
承認 2012.12.25
薬価収載 2013.02.22

トレシーバ(インスリンデグルデク)

適応
 インスリン療法が適応となる糖尿病

名前の由来
 「Tre」はラテン語で3を表しており、以下の3つの特徴から採用。
 1) HbA1cを効果的に改善
 2) 夜間低血糖の発現のリスクの低下
 3) 1日1回、毎日一定のタイミングであれば、いつでも投与することが可能
 「siba」は soluble insulin basal analogue の頭文字。

血中半減期
 18hr

代謝
 資料なし 

作用機序
 製剤中で2量体を形成しているヘキサマーが、皮下投与後にはマルチヘキサマーとなる。
 注射部位で生成したマルチヘキサマーからモノマーが徐々に放出され、効果を示す。

所見
 長時間作用型の遺伝子組み換えインスリン製剤。
 インスリンの特徴として6量体であるヘキサマーを形成することがあげられますが、トレシーバはこのヘキサマーの多量体を生体内で形成するようです。
 従来の長時間作用型のインスリン製剤と比較して、夜間低血糖が起こりにくいとの事です。

 現時点では、糖尿病に対するインスリン療法はかなり有効な手段で、OQLの向上に一役買っていると思います。・・・が、今後再生医療が発展していく中で、ランゲルハンス島が再生、もしくは体のどこかに付与されるようなことがあれば、徐々に姿を消す薬剤になってしまうかなとおもいます。再生医療の治験も徐々に広まっています。うまくいけば、あと20-30年後には薬物治療は不要になってしまうのではないでしょうか。 
 ノボ社はホルモン製剤等の開発もやっていますが、おそらく売り上げの大半はインスリン製剤だと思いますので、個人的には今後の展開が少し不安です。自己注時に痛みを感じないよう、注射針の開発もやっていたと記憶していますので、そちらの技術と特許で生き残っていくのかなーとか、考えています。

 まぁ、再生医療が安価に受けられるようになってしまったら、薬屋は食い上げですけどね。。。
 そうなったとして、残るとしたら抗生剤系とか、いじるのが難しい脳や精神系の薬剤になってくるんでしょうか。
 私は、少なくとも今世紀前半までは、まだ薬物治療が優位かなと思っています。

 世の中が発展していくほど、仕事がなくなっていきますね。

製品情報-トレシーバ
承認 2012.09.28
薬価収載 2013.02.22

ナーブロック(B型ボツリヌス毒素)

適応
 痙性斜頸

名前の由来
 「神経(nerve)をブロックする」ことから「NerBloc」と命名

血中半減期
 該当資料なし

代謝
 該当資料なし

作用機序
 末梢神経筋接合部における神経終末内で、アセチルコリンの放出に関与する蛋白質であるシナプトブレビンを切断することにより神経筋伝達を阻害し、筋弛緩作用を示す。

所見
 ボツリヌストキシンは毒素の抗原性の違いによりA~G型に分類されます。
 A型のボツリヌストキシンはGSKからボトックスとして発売されてますね。
 最近は美容整形分野でボトックスビスタってのも出てるようです。
 GSKがアラガンから開発・販売の使用許諾を受けて開発していました。
 これ、そういえばアラガン社も最近開発してましたけど、何ででしょ。
 表情皺の広告が山手線に出てましたが・・・。
 まぁ今回はB型なのでA型の話はまた今度。

 さて、ボツリヌストキシン。抗原性は違っても作用は同じようです。
 筋肉の収縮は、神経終末から放出されるアセチルコリンが、
 筋肉側のニコチン受容体に作用して起こります。
 その放出はアセチルコリンの含まれる小胞膜と神経終末膜の融合で起こりますが、
 ボツリヌストキシンは、アセチルコリンが含まれている小胞に取り込まれて、
 その融合を阻害することでアセチルコリンの放出を抑制し、
 筋肉の収縮を抑制する、いわゆる筋弛緩剤です。

 まさに「変毒為薬」といったところでしょうか。
 抗原性の違いで、A型ボツリヌス毒素治療抵抗性患者にも有効らしいですよ。

製品情報-ナーブロック
承認 2011.01.21
薬価収載 2013.02.22

マラロン配合錠(アトバコン/プログアニル塩酸塩)

適応
 マラリアの治療・予防

名前の由来
 該当資料なし

血中半減期
 アトコバン 57-60時間
 プログアニル 13-15時間

代謝
 アトコバン
 ほぼ見変化体のまま糞便排泄される

 プログアニル
 CYP2C19の代謝を受ける
 尿中に排泄される

作用機序
 アトコバン
 マラリア原虫の Cytochrome 活性を選択的に阻害し、
 ピリミジンの de novo 合成を阻害することで抗マラリア原虫活性を示す。
 
 プログアニル
 活性代謝物の cycloguanil が作用する。
 マラリア原虫のジヒドロ葉酸レダクターゼを選択的に阻害し
 チミジル酸合成、テトラヒドロ葉酸の合成を阻害することで
 DNA合成を低下させる。

所見
 Malaria と One をあわせて Malarone でしょうか。
 ハマダラカが媒介することで有名なマラリアの治療・予防薬。
 マラリアは蚊からスポロゾイドが血中に侵入し、肝臓へ移行、
 肝臓でメロゾイドが増殖して赤血球に進入、増殖することで発症に至る。
 肝臓内の組織分裂体は、三日熱マラリア原虫 および卵形マラリア原虫による感染では
 ヒプノゾイト(休眠型)として最長3年間存続するが、このヒプノゾイドには効果がないので注意。

製品情報-マラロン
承認 2012.12.25
薬価収載 2013.02.22

アメパロモ(パロモマイシン)

適応
 腸管アメーバ症

名前の由来
 特になし

血中半減期
 ほとんど吸収されないため該当資料なし

代謝
 ほとんど吸収されないため該当資料なし
 ほぼ見変化体のまま糞便排泄される

作用機序
 アミノグリコシド系抗生物質
 30Sリボソームに結合し、たんぱく質の合成を阻害する

所見
 アメーバとパロモマイシンでアメパロモ・・・?
 わかりやすくて良いと思います!
 現時点では、国内で腸管アメーバ症に適応を有する唯一の薬剤らしいです。
 厚労省の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議で検討・開発要請されて発売となっています。

製品情報-アメパロモカプセル250mg
承認 2012.12.25
薬価収載 2013.02.22

エリキュース(アピキサバン)

適応
 非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制

名前の由来
 ”Elegant”と”Liquid”の合成語として命名され、”Equilibrium”(平衡)の意味を含む

血中半減期
 6~10時間

代謝
 腎排泄、胆汁排泄等の複数の排泄経路を有する
 CYP3A4/5による代謝
 P-gp、BCRPの器質

作用機序
 血液凝固因子のXa因子の阻害

所見
 最近やたらと新薬が出た分野なのでしょうか。聞いたことのない薬がたくさんありました。
  クレキサン(エノキサパリン)
  アリクストラ(フォンダパリヌクス)
  イグザレルト(リバーロキサバン)
  リクシアナ(エドキサバン)
  プラザキサ(ダビガトラン)
 抗トロンビン薬であるプラザキサ以外は、Xa因子の阻害を主作用としているようです。
 数年前、第一三共はエドキサバン以外にもプラビックスの市場を奪えるような抗血栓薬を開発していると聞いたことがありました。調べたらエフィエント(プラスグレル)として先日製造販売承認を受けていたんですね。
 抗血小板薬と抗凝固薬、続々と新薬が出ているようなので改めてまとめを作って勉強しようと思います。

製品情報-エリキュース
承認 2012.12.25
薬価収載 2013.02.22

コレアジン(テトラベナジン)

適応
 ハンチントン病に伴う舞踏運動

名前の由来
 Chorea(舞踏運動、コレア)と一般名tetrabenazine の「zine、ジン」にちなんで命名

血中半減期
 5~6時間

代謝
 肝臓による代謝後、尿排泄
 CYP2D6による代謝

作用機序
 レセルピン同様の作用を有し、前シナプスにおいてモノアミン小胞トランスポーター(VMAT)を選択的に阻害することでシナプス小胞内のモノアミンを枯渇させる。
 レセルピンとの違いは、VMAT2を選択的に阻害できる点である。

所見
 VMATにはVMAT1とVMAT2が存在し、VMAT1は主に副腎髄質のクロム親和性細胞や腸管の腸クロム親和性細胞などの神経内分泌細胞に存在する。一方でVMAT2は主に中枢神経系や交感神経系のモノアミン作動性神経終末にあるシナプス小胞の膜上に存在している。
 そのため、VMAT2を選択的に阻害できるコレアジンは中枢特異的な作用があり、レセルピンのような血圧効果作用は示さないのかなと考えられます。
 コレアジンはモノアミンの中でも比較的ドパミン選択的な枯渇作用を示すらしいです。

製品情報-コレアジン錠12.5mg
承認 2012.12.25
薬価収載 2013.02.22