エフィエント(プラスグレル塩酸塩)

適応
 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
  急性冠症候群(不安定狭心症、非ST 上昇心筋梗塞、ST 上昇心筋梗塞)
  安定狭心症、陳旧性心筋梗塞

名前の由来
 エフィエント(Efient)= Efficacy(効果)+ Consistent(確実)

血中半減期(活性代謝物)
 開始用量(20mg): 5hr
 維持用量(3.75mg): 1hr

代謝
 カルボキシエステラーゼによる代謝を受けた後、
 CYP3A4, CYP2B6 等による代謝を受けて活性代謝物となる
 
作用機序
 血小板膜上の ADP 受容体 P2Y12 を選択的かつ非可逆的に阻害することで血小板凝集を抑制する。

所見
 パナルジン(チクロピジン)、プラビックス(クロピドグレル)に続く、チエノピリジン系の抗血小板薬の3種類目。
 チエノピリジン骨格に結合しているエステルが加水分解された後、チエノピリジン骨格のチオフェン部が開環して活性体になります。

 腎・肝機能障害を持っている人も、高齢者にも問題なく使えそうで、さらに薬の相互作用も薄いようなので、かなり使いやすそうな印象を持ちました。
 活性代謝物になるために寄与しているCYP3A4の阻害や誘導を行っても、活性体の薬動学・薬力学的なパラメータにほとんど差異はないみたいです。(CYP3A4の阻害は、CYP2B6の方で代謝されるのかなと思いますが、誘導はちょっと疑問が残ります。 カルボキシエステラーゼの代謝が律速になっているのでしょうか。)
 プラビックスは、日本人に比較的多い CYP2C19 の PM に対して効果が薄いことが判明していますが、エフィエントは CYP2C19 による代謝の影響が薄く、 CYP2C19 を阻害しても効果に影響がないので、日本人に対してはエフィエントのほうが使いやすそうです。

 さて、インタビューフォームのプラビックスを対照とした様々な臨床試験結果を見る限り、プラビックスと同等以上の有用性を出しているようです。
 ・・・が、先行して承認されたアメリカではそれほどの市場を獲得できなかったみたいです。薬価のせいだとか、販売戦略だとか、いろいろ影響があったのかなと思いますが、詳しいことはわかりません。2012年にはプラビックスのジェネリック品も FDA に承認されていますので、それを考慮すると今後の米国での売り上げ上昇は難しそうです。
 
 一方で日本ではどうかというと、先日、日本でも薬価収載されましたので、プラビックスを対象に「PCI が適用される虚血性心疾患」に使用する場合の薬価を検討してみました。
 プラビックスは初日に 300mg 、維持に 75mg 投与することになっています。
 プラビックス 75mg 錠の薬価が 282.7 円ですので、初日は 1130.8 円、維持に 282.7 円となります。

 対してエフィエントは初日に 20mg 、維持に 3.75mg 投与することになっています。
 エフィエント 5mg 錠の薬価が 359.8 円、エフィエント 3.75mg 錠の薬価が 282.7 円ですので、初日は 1439.2円、維持に 282.7 円となります。 

 初日は少しエフィエントのほうが高いですが、維持用量が同じなので、それほど薬価の影響はなさそうです。もう少しで、日本でのプラビックスの特許も切れますが、ジェネリックの切り替えがあまり進まない日本では、そこはあまり考慮しなくてよいのかなと思います。
 日本発の医薬品なので、がんばって欲しいですね。

製品情報-エフィエント
承認 2014.03.24
薬価収載 2014.05.23