ルセフィ(ルセオグリフロジン)

適応
 2型糖尿病

名前の由来
 ルセフィ(Lusefi)は、一般名のLuseogliflozin(ルセオグリフロジン)+fineから命名した。
 なお、ルセオグリフロジンの名称は、ラテン語で「光り輝く」を意味する「Luceo」に由来している。

血中半減期
 10-13hr

代謝
 CYP3A4, CUP3A5, CYP4A11, CYP4F2, CYP4F3B
 グルクロン酸抱合

作用機序
 SGLT2の阻害

所見
 フォシーガ、アプルフェイ、デベルザと同時期に承認を取得したSGLT2阻害薬です。
 ルセフィもグルクロン酸による抱合を受ける薬剤ですが、CYP系の代謝のほうが強いのか、肝機能患者を対象とした試験でも、フォシーガほど顕著な動態の変化は出ていなかったようです。

 副作用の傾向は他のSGLT2阻害薬と同じような傾向が出ていますが、低血糖の発現率が2.4%(30例/1262例)と、少し発現率が高い印象を受けました。ただ、治験段階の情報になりますので、対象集団の選択方法でもかなり変わってきますし、詳細は市販直後調査の結果をもって判断するべきと考えています。
 スーグラが10月まで、それ以外のSGLT2阻害薬が11月まで調査期間になっており、早ければ年明けにも全薬剤の情報が出揃うはずです。

 ルセフィはフォシーガと同じく、1日1回、2.5mg服用を標準としていますが、効果不十分の場合には5mgまで増量可となっています。
 薬価の設定も同じで、2.5mg錠の薬価が205.5円、5mg錠は308.3円となっているので、増量すると他のSGLT2阻害薬よりも少し高めになります。
 効果不十分の場合は、切り替え可能であれば、他薬への切り替えを試したほうがお得かもしれません。

 なお、ルセフィはノバルティスファーマと共同販売していますが、ルセフィは大正製薬の自社開発品で、販売ライセンスをノバルティスが取得したものと思われますので、某薬剤のような副作用の隠蔽等は無いはずと考えています。

製品情報-ルセフィ
承認 2014.03.24
薬価収載 2014.05.23

フォシーガ/(ダパグリフロジン)

適応
 2型糖尿病

名前の由来
 患者のため、患者家族のため、医師のためをあらわす「for」と、inhibit glucose absorption(糖の吸収を阻害する)の頭文字「iga」を掛け合わせる(x)ことで、他の血糖降下薬にはない新たな作用であることを表現している。

血中半減期
 12-13hr

代謝
 グルクロン酸抱合

作用機序
 SGLT2の阻害

所見
 2012年10月にSGLT2阻害剤として世界で初めて2型糖尿病治療薬の承認をオーストラリアで取得した薬です。
 尿路感染や性器感染等、感染症の発現率が最も高かったようですが、それでも3.1%(31例/1012例)なので、さほど気にすることはないレベルだと思っています。

 ダパグリフロジンはグルクロン酸による抱合を受けるので、肝障害患者だとやはり血中濃度が上昇するようです。 ただ、腸管循環を受けない分、半減期は早くなるようで、中~重度の肝障害患者では血中半減期が 6 – 8hrと、一般患者の倍の速度で排泄されていました。

 フォシーガは1日1回、5mg服用を標準としていますが、効果不十分の場合には10mgまで増量可となっています。
 5mg錠の薬価が205.5円、10mg錠は308.3円となっているので、増量すると他のSGLT-2阻害薬よりも少し高めになります。
 効果不十分の場合は、切り替え可能であれば、他薬への切り替えを試したほうがお得かもしれません。

製品情報-フォシーガ
承認 2014.03.24
薬価収載 2014.05.23

アプルウェイ/デベルザ(トホグリフロジン)

適応
 2型糖尿病

名前の由来
 アプルウェイ
 Apleway はApple(りんご)とway(道、方法)の造語で、リンゴの樹皮から抽出された物質を起源とした、
 いままでの糖尿病治療薬にはない作用機序をもつ薬剤という意味から

 デベルザ
 de beleza ポルトガル語での「美」を意味する
 エネルギー代謝全般を改善し、内面から身体本来の「Inner beauty」を取り戻すことを期待できる薬剤であることから

血中半減期
 4-6hr

代謝
 CYP2C18, CYP3A4, CYP3A5, CYP2C18、CYP4A11, CYP4F3B
 などのCYP系による代謝とグルクロン酸抱合

作用機序
 SGLT2の阻害

所見
 最近承認されたSGLT-2阻害薬は、リンゴや梨の樹皮から見つかった「グリフロジン」という物質に、SGLT阻害作用が見出されて薬剤化された医薬品です。

 トホグリフロジンの開発は、中外、サノフィ、興和の3社による共同開発が実施され、サノフィと興和から、それぞれ販売されました。
 同じ成分で2つの名前を持つ薬剤は、分かりづらくてあまり好きではないですね・・・。個人的には、名前に発祥場所を入れたサノフィの命名に軍配を上げたいところです。

 さて、見出されたのが1980年代らしいので、30年ほどの期間を経て、市場に出てきています。この薬に限ったことではなく、やはり市場に出るまでにはかなり時間がかかります。新薬開発も難しくなっているので、まだまだ製薬会社の再編は進むかなと思っています。

 トホグリフロジンはCYP系による代謝を受けているので、肝障害患者だとやはり血中濃度が上昇するようです。 ただ、承認用量の倍量である 40mg を服用されていた試験でも、副作用の傾向にほとんど差はないようでしたので、それほど気にしなくてよいのかなと思います。スーグラ同様のSGLT2阻害薬なので、そもそも腎不全でグルコースを尿中へ排泄できない人には効果のない薬剤になります。

 スーグラでは見られなかった副作用として「血中ケトン体上昇」が11.5%(117例/1060例)の方に出ているのが少し気になります。
 糖がエネルギーとして利用できない場合、脂肪を分解してケトン体をエネルギー源としますので、尿中グルコースの再吸収阻害だけでなく、血中グルコースの体内吸収までもが阻害されてしまっているのかなと考えています。ケトアシドーシスの副作用は報告されていなかったようですが、他の薬との併用状況によっては起こりやすい状況にあります。

 それ以外は1日1回朝服用、薬価も同じで、スーグラとあんまり変わらないのかなと思います。
 市販直後調査の結果待ちです。

製品情報-アプルウェイ
製品情報-デベルザ
承認 2014.03.24
薬価収載 2014.05.23

スーグラ(イプラグリフロジン)

適応
 2型糖尿病

名前の由来
 SGLT2(sodium glucose co-transporter 2)のローマ字部分S・G・L・Tをとって、スーグラ(Suglat)と命名

血中半減期
 10-15hr

代謝
 肝臓でグルクロン酸抱合を受け、尿中に排泄される
 P-gpの基質となる

作用機序
 SGLT2の阻害

所見
 経口剤で吸収率が90%以上というとても吸収率の高い薬剤です。
 5月にもSGLT2阻害薬が3つ
  アプルウェイ/デベルザ(トホグリフロジン)
  フォシーガ(ダパグリフロジン)
  ルセフィ(ルセオグリフロジン)
 が薬価収載となりましたが、その前に薬価収載となった一番最初のSGLT2阻害薬です。

 SGLTはNa+/グルコース共輸送担体のことで2種類のトランスポーターがあります。
  SGLT1: 主に小腸と腎近位尿細管に発現しており、小腸上皮でのグルコース吸収を担う主要なトランスポーター
  SGLT2: 腎近位尿細管に特異的に発現しており、腎臓でのグルコース再吸収を担う主要なトランスポーター

 このうち、余分にろ過されたグルコースを再吸収するSGLT2を阻害することで、尿中へグルコースを排泄し、血中の薬物濃度を下げるのがSGLT2阻害薬です。なので、そもそも腎不全でグルコースを尿中へ排泄できない人には効果のない薬剤になってしまいます。
 低血糖のリスクが従来の糖尿病薬に加えて少ないことが売りみたいですね。
 まだ日が浅いので、まずは他のSGLT2阻害薬とともに市場獲得を目指しているところでしょうか。

 糖尿病薬についても、いずれ従来の薬剤含めたまとめを作りたいと思っています。

製品情報-スーグラ
承認 2014.01.17
薬価収載 2014.04.17

血栓形成と抗血栓薬

<血栓形成>
1. 一次止血
1-1. 一次凝集(①~③)
 血管の損傷部位に von Willebrand 因子(vWF)を仲介して血小板が接着し、血小板主体の血栓ができる。

1-2.  二次凝集(④~⑤)
 血小板が活性化し、フィブリノゲンや vWF を介した血栓を形成する。

2. 二次止血(⑥)
 血液凝固因子の反応により、フィブリノゲンがフィブリンとなる。
 フィブリンは最終的に重合して安定化した血栓を形成する。
01_血栓形成102_血栓形成203_血栓形成3


<血小板の活性化>
 通常、血小板はフィブリノゲンと結合する受容体を発現していないが、 vWF と GPIb 受容体を介して血管の破損部位に接着することで、フィブリノゲンと結合できる GPIIb/IIIa 受容体を発現する。また、活性化した血小板は周囲の血小板を活性化させる。

 活性化した血小板は、トロンボキサンA2(TXA2), セロトニン(5-HT), アデノシン二リン酸(ADP) 等を放出する。
 TXA2 と 5-HT は、それぞれ血小板上の受容体に結合し、ホスホリパーゼC(PLC)を活性化して血小板内のカルシウムイオン濃度を上昇させる。一方で ADP は受容体を介してアデニル酸シクラーゼ(AC)を抑制し、細胞内カルシウムイオンの低下を抑制する。
 また、カルシウムイオン濃度の上昇に伴い、ホスホリパーゼA2(PLA2)が活性化し、アラキドン酸カスケードを経て TXA2 が合成される。
04_血小板の活性化05_周囲の血小板活性化


<血液凝固カスケード>
1. 内因系
 すべて血液内の凝固因子でまかなわれる、第XII因子から始まるカスケード。
 第XII因子の活性化から始まり、第XI因子、第IX因子、第VIII因子の活性化を経て、第X因子を活性化する。
 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)で観察しているのはこちら。

2. 外因系
 細胞損傷などにより血液中に流出する組織因子を介したカスケード。
 第VII因子の活性化をもって、第X因子を活性化する。
 プロトロンビン時間(PT)で観察しているのはこちら。

3. 共通系
 第X因子の活性化以後の共通カスケード。
 第X因子の活性化から始まり、第V因子、第II因子、第I因子の活性化を経て、フィブリンを形成する。
07_凝固カスケード


<出血性疾患>
1. 血友病
 凝固因子をコードする遺伝子の劣性遺伝により生じるため、ほとんどが男性である。
 第VIII因子の欠損もしくは活性低下を血友病A、第IX因子の欠損もしくは活性低下を血友病Bに分類する。

 第VIII因子、第IX因子ともに内因系凝固因子のため、PTは延長せずAPTTのみ延長する。
 また、血小板に異常はないため、出血時間は正常。

2. von Willebrand病(vWD)
 von Willebrand因子(vWF)をコードする遺伝子の異常により、vWFの欠損もしくは活性低下により発症する。
 一次止血が出来ないため、出血時間が延長する。
 凝固因子が正常の場合は、PT、APTTは延長しない。

3. 紫斑病
3-1. 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
 急性: 小児に多く見られ、ウイルス感染による抗体や抗原抗体複合体による血小板障害が原因
 慢性: 成人女性に多く見られる。血小板に対する自己抗体の産生が原因
 一次止血が出来ないため、出血時間が延長する。
 凝固因子が正常の場合は、PT、APTTは延長しない。

3-2. 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
 何らかの原因により微小血管が傷害され血小板血栓ができ、大量の血小板が消費されることが原因。
 先天性と後天性があるが、後天性が95%以上である。
 一次止血が出来ないため、出血時間が延長する。
 凝固因子が正常の場合は、PT、APTTは延長しない。

4. 播種性血管内凝固症候群(DIC)
 全身血管内で持続的な凝固活性化により微小血栓が多発し、凝固因子と血小板が使い果たされる事が原因。
 敗血症などで血管内皮細胞が破壊され、組織因子が血中に漏出することで外因系のカスケードが活性化し、フィブリン血栓ができる。
 また、線溶系も活性化しているため、出欠部位で血栓の溶解による出欠傾向もある。
 インドメタシンやアシクロビル、ドセタキセルなどの薬剤により引き起こされることも。
 凝固に関与するすべての因子が消費されるので、出血時間、PT、APTTのすべてが延長する。


<抗血栓薬>
1. 抗血小板薬
1-1. TXA2の合成阻害
1-1-1. COXの阻害
 COX1の作用を阻害する事でTXA2の産生を抑制する。
 薬剤:アスピリン系

1-1-2. TXA2合成酵素の阻害
 TXA2合成酵素を阻害することで、TXA2の産生を抑制する。
 薬剤:ドメナン、ベガなどのオザグレル製剤

1-2. cAMP濃度の上昇
1-2-1. ホスホジエステラーゼ(PDE)の阻害
 cAMP分解酵素である PDE を阻害して血小板内カルシウムイオン濃度を下げる。
 薬剤:プレタール、プレタミラン、シロスレットなどのシロスタゾール製剤
     ペルサンチン、アンギナールなどのジピリダモール製剤

1-2-2. PGI2受容体の刺激
 PGI受容体を刺激してACを活性化し、cAMPの濃度を上昇させる。
 薬剤: ドルナー、プロサイリンなどのベラプロスト製剤

1-2-3. PGE1受容体の刺激
 PGE受容体を刺激してACを活性化し、cAMPの濃度を上昇させる。
 薬剤:オパルモン、プロレナールなどのリマプロスト製剤

1-2-4. ADP受容体の遮断
 AC を抑制するシグナル伝達を出すADP受容体を遮断し、ACを活性化する。
 薬剤:パナルジン(チクロピジン)、プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント(プラスグレル)

1-3. PLCの活性化抑制
1-3-1. 5-HT2受容体の遮断
 PLCを活性化するシグナル伝達を出す5-HT受容体を遮断し、カルシウムイオン濃度の上昇を抑制する。
 薬剤: アンプラーグ(サルポグレラート)

2. 抗凝固薬
2-1. 凝固因子の合成阻害
 凝固因子の合成を阻害する。
 薬剤: ワーファリン(ワルファリン)

 ワーファリンは第X因子、第IX因子、第VII因子、第II因子の合成を阻害する。
 上述の4因子は、肝臓でビタミンK関与の基に合成が行われているが、ワーファリンはビタミンKに拮抗することで合成を阻害する。そのため、納豆やクロレラなどのビタミンKを含む食品の摂取は効果を弱めるため、避ける必要がある。

2-2. 活性型第X因子の阻害
 活性型の第X因子は、凝固カスケード下流でプロトロンビンをトロンビンに変換する。
 この活性型第X因子を阻害することでトロンビンの産生を抑制し、抗凝固作用を示す。
 薬剤: エリキュース(アピキサバン)、イグザレルト(リバーロキサバン)、リクシアナ(エドキサバン)

2-3. アンチトロビンIIIの活性化
 アンチトロンビンを活性化させることで活性型因子を不活性化し、抗凝固作用を示す。
 薬剤: ヘパリン系、アリクストラ(フォンダパリヌクス)

 なお、アリクストラはヘパリンと異なり、活性型第X因子を選択的に不活性化する。

2-4. トロンビンの活性阻害
 トロンビンの活性を阻害することで、フィブリンの生成や凝固カスケードの活性化を抑制する。
 薬剤: スロンノン、ノバスタンなどのアルガトロバン製剤、プラザキサ(ダビガトラン)
06_抗血小板薬08_抗凝固薬


<血栓溶解薬>
 フィブリンを溶解するプラスミンの生成を促進する。
 ただし、血栓形成から時間経過ごとに効果が薄くなる。適応範囲は血栓形成から4.5時間以内。
 薬剤: アルテプラーゼ、モンテプラーゼ、パミテプラーゼなどの t-PA 製剤

ニュープロ(ロチゴチン)

適応
  パーキンソン病、 中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群)

名前の由来
 特になし

血中半減期
 5-6hr

代謝
 硫酸抱合、グルクロンサン抱合
 CYP2C19、CYP1A2

作用機序
 ドパミン受容体(主としてD3)の刺激によるドパミン神経系の活性化

所見
 「ニュー」は Neuron から来ていると思いますが、「プロ」の由来はどこなんでしょう。。。
 インタビューフォーム見る中で名前の由来を見るのが結構楽しみなので、「特になし」とかあるとちょっとがっかりします。薬の名前決めるのって結構重要なイベントだと思うんですけど、特に何の思い入れもなく適当にくじ引きとかで決めるんでしょうか。不思議です。

 さて、薬理作用はというと、レキップ(ロピニロール)やミラペックス(プラミペキソール)などのドパミン作動性パ-キンソン病治療と同様に、ドパミンD2様受容体を刺激することで作用を示します。
 D1様受容体(D1, D5)は興奮性のシグナル伝達を、D2様受容体(D2, D3, D4)は抑制性のシグナル伝達を起こします。パーキンソン病ではドパミンの低下からこれらの調節が効かなくなり、下流にあるアセチルコリン神経系の活性化とそれに伴うGABA神経系の活性化を引き起こします。GABAは基本的に抑制性の神経伝達物質ですので、パーキンソン病の症状のひとつである運動性の低下は、このGABA神経の活性化によるものと言われています。

 この製剤はパーキンソン病で初めてのパッチ型製剤ではないでしょうか。
 慢性的な疾患に対する服薬コンプライアンスやQOLのことを考えると、毎回注射をするのは苦痛が伴いますし、経口薬は飲み忘れる可能性がありますので、経皮吸収型の製剤が最適かなと思います。もちろん、人それぞれ好みはありますので一概には言えませんが。

 本音を言うと、このような対症療法ではなく根本を治療出来る薬剤の開発が待ち遠しいところですが、病変の原因はいまだにはっきりとわかっていませんので、今後の研究に期待です。
 再生医療の面からいうと、2016年にはiPS細胞をドパミン神経細胞へ分化させて、脳へ移植するという大胆な臨床研究も京大で始まるようです。 結果としては、薬物治療と同じで脳内のドパミンを対症療法的に増やすということだと思いますので、病気を完治させるものではありませんが、場合によっては薬物治療以上の効果が得られるものになると思います。脳を開けて移植っていうのは少し怖いですけどね。。。

 薬の市場が小さくなってしまうのは、薬屋としては少し残念ですが、医療人としてはうれしく思います。
 日本発のiPS細胞。再生医療も日本がリードしていけるよう、がんばって欲しいです。

製品情報-ニュープロ
承認 2012.12.25
薬価収載 2013.02.22

シムジア(セルトリズマブ)

適応
 既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)

名前の由来
 一般名のCertolizumabのcとzを用いた造語に由来している。

血中半減期
 10-13hr

代謝
 該当資料なし

作用機序
 TNF-α との親和性が高く、 TNF-α と結合することで TNF-α 受容体との結合を減らし、以後の伝達・炎症反応を抑える。

所見
 抗体の Fab 部 に PEG をつけて血中滞留性を持たせた製剤です。
 抗体は抗原に結合後、その抗原を破壊するような細胞障害性を惹起します。シムジアは同種薬剤のレミケード(インフリキシマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、ヒュミラ(アダムリマブ)と比べて、その細胞障害性が低いことが売りですが、一方で TNF-α に対する親和性は、 in vitro の実験では レミケード > ヒュミラ > シムジア > エンブレル という結果も出ています。
 それからシムジアは既に発生している炎症を抑えるような作用もあるみたいですね。

 そういえば、第一三共がエンブレルのバイオシミラーを作るとかニュースで見た気がしますが、製品化は出来たんでしょうか。バイオシミラーは分子量が大きいだけあって、真似するのはなかなか難しいと思いますが、リウマチ患者さんにとっては、おそらくほぼ一生付き合っていく薬になと思いますので、安価な後発品が選択できるようになったら良いなと思っています。 

製品情報-シムジア
承認 2012.12.25
薬価収載 2013.02.22

トレシーバ(インスリンデグルデク)

適応
 インスリン療法が適応となる糖尿病

名前の由来
 「Tre」はラテン語で3を表しており、以下の3つの特徴から採用。
 1) HbA1cを効果的に改善
 2) 夜間低血糖の発現のリスクの低下
 3) 1日1回、毎日一定のタイミングであれば、いつでも投与することが可能
 「siba」は soluble insulin basal analogue の頭文字。

血中半減期
 18hr

代謝
 資料なし 

作用機序
 製剤中で2量体を形成しているヘキサマーが、皮下投与後にはマルチヘキサマーとなる。
 注射部位で生成したマルチヘキサマーからモノマーが徐々に放出され、効果を示す。

所見
 長時間作用型の遺伝子組み換えインスリン製剤。
 インスリンの特徴として6量体であるヘキサマーを形成することがあげられますが、トレシーバはこのヘキサマーの多量体を生体内で形成するようです。
 従来の長時間作用型のインスリン製剤と比較して、夜間低血糖が起こりにくいとの事です。

 現時点では、糖尿病に対するインスリン療法はかなり有効な手段で、OQLの向上に一役買っていると思います。・・・が、今後再生医療が発展していく中で、ランゲルハンス島が再生、もしくは体のどこかに付与されるようなことがあれば、徐々に姿を消す薬剤になってしまうかなとおもいます。再生医療の治験も徐々に広まっています。うまくいけば、あと20-30年後には薬物治療は不要になってしまうのではないでしょうか。 
 ノボ社はホルモン製剤等の開発もやっていますが、おそらく売り上げの大半はインスリン製剤だと思いますので、個人的には今後の展開が少し不安です。自己注時に痛みを感じないよう、注射針の開発もやっていたと記憶していますので、そちらの技術と特許で生き残っていくのかなーとか、考えています。

 まぁ、再生医療が安価に受けられるようになってしまったら、薬屋は食い上げですけどね。。。
 そうなったとして、残るとしたら抗生剤系とか、いじるのが難しい脳や精神系の薬剤になってくるんでしょうか。
 私は、少なくとも今世紀前半までは、まだ薬物治療が優位かなと思っています。

 世の中が発展していくほど、仕事がなくなっていきますね。

製品情報-トレシーバ
承認 2012.09.28
薬価収載 2013.02.22

エフィエント(プラスグレル塩酸塩)

適応
 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
  急性冠症候群(不安定狭心症、非ST 上昇心筋梗塞、ST 上昇心筋梗塞)
  安定狭心症、陳旧性心筋梗塞

名前の由来
 エフィエント(Efient)= Efficacy(効果)+ Consistent(確実)

血中半減期(活性代謝物)
 開始用量(20mg): 5hr
 維持用量(3.75mg): 1hr

代謝
 カルボキシエステラーゼによる代謝を受けた後、
 CYP3A4, CYP2B6 等による代謝を受けて活性代謝物となる
 
作用機序
 血小板膜上の ADP 受容体 P2Y12 を選択的かつ非可逆的に阻害することで血小板凝集を抑制する。

所見
 パナルジン(チクロピジン)、プラビックス(クロピドグレル)に続く、チエノピリジン系の抗血小板薬の3種類目。
 チエノピリジン骨格に結合しているエステルが加水分解された後、チエノピリジン骨格のチオフェン部が開環して活性体になります。

 腎・肝機能障害を持っている人も、高齢者にも問題なく使えそうで、さらに薬の相互作用も薄いようなので、かなり使いやすそうな印象を持ちました。
 活性代謝物になるために寄与しているCYP3A4の阻害や誘導を行っても、活性体の薬動学・薬力学的なパラメータにほとんど差異はないみたいです。(CYP3A4の阻害は、CYP2B6の方で代謝されるのかなと思いますが、誘導はちょっと疑問が残ります。 カルボキシエステラーゼの代謝が律速になっているのでしょうか。)
 プラビックスは、日本人に比較的多い CYP2C19 の PM に対して効果が薄いことが判明していますが、エフィエントは CYP2C19 による代謝の影響が薄く、 CYP2C19 を阻害しても効果に影響がないので、日本人に対してはエフィエントのほうが使いやすそうです。

 さて、インタビューフォームのプラビックスを対照とした様々な臨床試験結果を見る限り、プラビックスと同等以上の有用性を出しているようです。
 ・・・が、先行して承認されたアメリカではそれほどの市場を獲得できなかったみたいです。薬価のせいだとか、販売戦略だとか、いろいろ影響があったのかなと思いますが、詳しいことはわかりません。2012年にはプラビックスのジェネリック品も FDA に承認されていますので、それを考慮すると今後の米国での売り上げ上昇は難しそうです。
 
 一方で日本ではどうかというと、先日、日本でも薬価収載されましたので、プラビックスを対象に「PCI が適用される虚血性心疾患」に使用する場合の薬価を検討してみました。
 プラビックスは初日に 300mg 、維持に 75mg 投与することになっています。
 プラビックス 75mg 錠の薬価が 282.7 円ですので、初日は 1130.8 円、維持に 282.7 円となります。

 対してエフィエントは初日に 20mg 、維持に 3.75mg 投与することになっています。
 エフィエント 5mg 錠の薬価が 359.8 円、エフィエント 3.75mg 錠の薬価が 282.7 円ですので、初日は 1439.2円、維持に 282.7 円となります。 

 初日は少しエフィエントのほうが高いですが、維持用量が同じなので、それほど薬価の影響はなさそうです。もう少しで、日本でのプラビックスの特許も切れますが、ジェネリックの切り替えがあまり進まない日本では、そこはあまり考慮しなくてよいのかなと思います。
 日本発の医薬品なので、がんばって欲しいですね。

製品情報-エフィエント
承認 2014.03.24
薬価収載 2014.05.23

ナーブロック(B型ボツリヌス毒素)

適応
 痙性斜頸

名前の由来
 「神経(nerve)をブロックする」ことから「NerBloc」と命名

血中半減期
 該当資料なし

代謝
 該当資料なし

作用機序
 末梢神経筋接合部における神経終末内で、アセチルコリンの放出に関与する蛋白質であるシナプトブレビンを切断することにより神経筋伝達を阻害し、筋弛緩作用を示す。

所見
 ボツリヌストキシンは毒素の抗原性の違いによりA~G型に分類されます。
 A型のボツリヌストキシンはGSKからボトックスとして発売されてますね。
 最近は美容整形分野でボトックスビスタってのも出てるようです。
 GSKがアラガンから開発・販売の使用許諾を受けて開発していました。
 これ、そういえばアラガン社も最近開発してましたけど、何ででしょ。
 表情皺の広告が山手線に出てましたが・・・。
 まぁ今回はB型なのでA型の話はまた今度。

 さて、ボツリヌストキシン。抗原性は違っても作用は同じようです。
 筋肉の収縮は、神経終末から放出されるアセチルコリンが、
 筋肉側のニコチン受容体に作用して起こります。
 その放出はアセチルコリンの含まれる小胞膜と神経終末膜の融合で起こりますが、
 ボツリヌストキシンは、アセチルコリンが含まれている小胞に取り込まれて、
 その融合を阻害することでアセチルコリンの放出を抑制し、
 筋肉の収縮を抑制する、いわゆる筋弛緩剤です。

 まさに「変毒為薬」といったところでしょうか。
 抗原性の違いで、A型ボツリヌス毒素治療抵抗性患者にも有効らしいですよ。

製品情報-ナーブロック
承認 2011.01.21
薬価収載 2013.02.22